オーディオ三昧
          第10回

 
 
マイクロ糸ドライブ・ターンテーブル 
 吸着ポンプ・システムの解析と修理
  吉田昌弘

私のJAZZ喫茶・映画館では1960年代に作られた時代物の電音製アイドラー・ドライブ・ターンテーブルを改造したものと80年代のマイクロ製・糸ドライブ・吸着式ターンテーブルの2台を使い分けています。
ある日気が付くと、この糸ドライブ・ターンテーブルの吸着に不具合が生じ、LP盤をターンテーブルに貼り付けないで、浮いたまま載せている状態です。故障の原因を探って行くと、盤を外す為の排気に問題は無いのですが、吸気が働いていません。
現在ではその製造メーカー「マイクロ精機株式会社」も無く、インターネット等でその修理の事例を探しましたが以外と有りませんでした。そこで自分で修理するつもりで分解して解析していきます。
これはMJ無線と実験誌2009年1月号に発表した原稿を元にして、その文章がパソコンの説明書の様で部外者には分かりづらく思われましたので、その反省を込め私自身の理解を深め、その後の分かった事などを加えて書き直し当HPに載せるつもりで準備していましたが、2011.3.11.の震災により大幅に遅れました。


吸着式ターンテーブル・システムの基本原理は
装置を大気中で使って居り、LP盤をターンテーブルの上にセットし吸着動作を指示した時、LP盤とターンテーブルの間の空気を吸気して抜いてやり真空状態を作り、周囲の大気圧でLP盤をターンテーブルに押さえ付けると云う考えです。
その結果150グラム前後のビニール質LP盤と金属ターンテーブルが見かけ上一体 となり、数キログラムの塊のLP盤となります。その塊に刻まれている溝からカートリッジが振幅を拾い再生する事になります。150グラムの薄い盤よりも数キログラムの塊から音を拾う方が良いだろうと云うカッティングマシーンのターンテーブルと同じ考え方に基づいた原理です。
マイクロ製ではターンテーブル側とヴァキューム・ポンプの間をシリコン製のパイプで繋いでおります。
このシリコン・パイプが外れたり破断したりしてそこから空気が漏れる事故は偶に起こります。 今回はその様な連結パイプの破談では有りませんでした。
現状をさらに探って行くと、ポンプ・システムに問題が有り、盤を外す為の排気に問題なく空気が吹き出ていますが、吸気が働いて居ないことが分かりました。
吸着ポンプ・ユニットの故障です。




私のポンプ・ユニットは「MICRO BL-91吸着改造キット”MK-91V”」と言い木製の密閉箱に納められています。マイクロ精機ではこの木製の密閉箱をポンプユニットと称しブラック・ボックス化し、使用者が開けない前提で作られています。
まずは、この ポンプ・ユニットの木箱を明けて様子を見て行きます。
木箱の前面下部には電源スイッチとパイロットランプが有り、
背面上部に写真手前から3本の砲金製の継ぎ手A,B,Cと電源ケーブルが出ています。
動作時、ごく僅かですが音を発しますので、私はターンテーブルの下奥へ収納し1メートル強のシリコン・パイプで繋いで使用しています。シリコン・パイプが原因の事故はこの写真の継ぎ手付近での折れ曲がり箇所で起こります。
ポンプユニット側の電源SWはONの状態としてプレイヤー側に新たにSWを設け、これに繋いでON-OFFを行います。

 

カタログと取り扱い説明書を精読します。
マイクロ精機では木箱をポンプユニット、軸受けをシャフトAssy、切り替えバルブをバルブAssyと呼んでいます。
取り扱い説明書にはポンプ・ユニット・木箱の3本の継ぎ手からの配管として、木箱の継ぎ手BとCの2本を切り替えコントロールのバルブAssy・側面・上下部のBとCへ繋ぐ事と、木箱の継ぎ手AからはバルブAssy底部のAへと繋ぎ、
バルブAssy・中央部のSと軸受けシャフトAssy・底部へ1本のパイプを繋いで使う事だけが書かれています。
ポンプ・ユニット継ぎ手B〜バルブシャフトBは吸気専用回路、
ポンプ・ユニット継ぎ手C〜バルブシャフトCは排気専用回路と成っており、
ポンプ・ユニット継ぎ手A〜バルブシャフトAとバルブシャフトS〜軸受けシャフトAssyとの間の2回路は吸排気の往復と成っています。


ポンプ・ユニット・木箱の裏側の木ねじを外して、裏蓋を開け、充填されているスポンジを取り外しますと中が一望できます。
下の写真がそれです。
ユニットの組み立て状態は、写真左側が木箱の底部になり電源スイッチなどの回路基盤があり、右側・上部に貫通した継ぎ手3本と電源コードがまとめられています。
中にはロシアの人形マトリショーカの様に、さらにまた小さな木製の密閉箱が一つ入っております。
その小さな密閉箱も取り出し、その蓋を開け外した様子です。
小さな密閉箱の中にはプラスチック製のポンプ本体が有ります。ポンプには頭頂部と側面下部に継ぎ手が付いて居ります。木箱には穴があり、ポンプ本体をこの小さな木箱に納めた状態でポンプ継ぎ手の位置と合い、配管はポンプ本体から直接出ている事が分かります。この木箱は防振・防音の為のカバーでしょう。
この小さな密閉箱の下になる位置に2本のガラス瓶が並べて納められています。
このガラス瓶にはそれぞれ蓋に2本づつ継ぎ手が付いています。

 

ポンプ本体を取り出し、通電して試験したところ問題なく動いています。
頭頂部が排気で側面下部が吸気でトンネル状に一方通行です。
ポンプ動作時、吸気口に指を吸い付けて蓋をすると、ポンプのモーターは動いていますが、排気口から空気は出ません。
ポンプ・ユニットの木箱内での全体の組み立て状態は 、
ポンプからは2本の継ぎ手が出ていて、
ガラス瓶には2X2=4本の配管を示す継ぎ手があります。
ポンプ・ユニットの木箱は写真のガラス瓶の上にポンプの小さな木製密閉箱をスポンジ・クッションにして浮かせた状態で重ね、さらに上からクッションを間に挟んでポンプ・ユニットの木蓋を閉じ、ネジで締め付けて中のガラス瓶とポンプを固定するのでしょう。
ポンプ・ユニット木箱の外壁は写真右端上に見られる3本の貫通継ぎ手があり、これらが繋がっているはずです。
そしてポンプ・ユニットからの3本の貫通継ぎ手が外と繋がります。

その箱を開けて中を見て判明しましたが、
内部は厚手の硬質ビニール・チューブで配管されていたのでしょう、
それが油成分による変質と自然劣化で割れてしまいボロボロの状態で 、
元の配管の接続が分かりません。


ポンプ・ユニット木箱には3本の継ぎ手が貫通しており、箱の外のバルブAssyへ配管により繋いでいます。
箱の内部世界ではポンプからの2本とガラス瓶の4本、計6本の継ぎ手が有ります。
ポンプからの2本をガラス瓶へ配管すると
4 - 2 = 2
となり、2本の継ぎ手が残ります。
この2本をどの様に3本の貫通した継ぎ手へ繋ぐのか悩みました。
2 → 3 = ?
インターネットにてマイクロ・ヴァキューム・ポンプユニット内部の配管図を探しましたが、配管に付いては類似した記述さえも見つかりませんでした。
そこでカタログを手がかりに自分で考えなければ成りません。

 



 

取り扱い使用説明書にはヴァルブAssyからこのポンプ・ユニットの木箱の3本の継ぎ手への配管と、ヴァルヴAssyからターンテーブル軸受け・シャフトAssyへの配管しか記載されておりません。
「箱」の中の配管がダメに成っているのと継ぎ手の数が合わない事を、箱の中の配管ばかり考えていた為、かえって答え遠ざけて見え難くしていました。
試行錯誤の結果、一度「箱」を外して、吸気と排気と云う働きから見つめ直してはどうかと思いつきました。
そこで、各パーツを並べて、私の解読した配管図をカタログを参考に書き出して、全体の動きを考えてみました。
それが右の図です。


ポンプから直接「軸受け」に繋いだとすると、
吸気を繋いでやれば吸気として働き、反対に排気を繋げば排気として働きます。
ここで使われているポンプ本体の動作はトンネル状に空気を吸気口から排気口へ一方通行で動いて居り、このポンプ自身の動きを反転させる事は出来ません。
原理としては吸気パイプか排気パイプを軸受けで繋ぎ、選ばれなかったパイプをオープンの状態にし 、それを差し替えてやれば吸気の働きと排気の働きを選ぶことが可能です。
そこで、切り替えバルブAssyで吸気と排気を交通整理してやり、それを軸受けシャフトAssyに繋いでやれば、吸気の働きと排気の働きを選ぶことが可能です。
シャフトAssyを経由してターンテーブルに行った空気の流れはターンテーブル上にのせたLP盤に対して 吸気または排気の働きをすると考えました。

 

そこで、ポンプ本体をポンプユニットから取り出し、ガラス瓶の無い状態で、切り替えバルブAssyと繋ぎ、試験動作を行ってみました。
ポンプ→ 切り替えバルブAssy→シャフトAssyと配管してやると吸気も排気もバルブで指示したとうりに働いてくれます。
基本的な考え方は間違っていなかったのです。
写真左手のハンマートーン塗装の台形が自作しました本糸ドライブ・吸着ターンテーブルのコントロールパネルです。
左からターンテーブル回転のON-OFFスイッチ、その右がバキューム・システムの電源スイッチ、その下にパイロットランプをつけてバキュームのON-OFFを見ます。
さらに下の穴が吸排気切り替えバルブのノブの穴です。
使い勝手を考えて一カ所に纏めました。
このモーター部分はホーンと同じタモを素材として作ったブロックで、詳細は当・オーディオ三昧・第7回・吸着糸ドライブプレイヤー新調の記 をご覧下さい。


次に、ガラス瓶をポンプ本体と切り替えバルブAssyの間に入れてみます。
ガラス瓶を間に入れても吸排気の働きは同じですが、ポンプの動きの波がガラス瓶の中の空気バネによって滑らかになり、ガラス瓶はクッションとして働いていると考えられます。吸気・排気の働きに変わりはありません。
バルブの継ぎ手A の部分では何も繋がないと、かすかに吸排気の音がします。
そこで20センチほの短いシリコンパイプを繋ぎますと、この音は消えます。
また継ぎ手A を塞ぐと吸排気の働きが止まり、大気と繋がっている事を示します。
継ぎ手Aの口で発するかすかな音が気になるので短いシリコンパイプをぶら下げておいても良いのですが、埃の混入などを考えて木箱の継ぎ手Aへ導いていると考えられます。その かすかな空気の出入りする音が木箱の中で発するのであれば使用上全く聞こえません。
切り替えバルブAssyA=大気=ポンプ・ユニット継ぎ手A
これで解析出来ました、後は組み立てていけば修理完了です。

 

 


 HJ 無線と実験 掲載時
、同誌レイアウトの高橋壮一氏が書いて下いました。
 


ポンプ・ユニット・木箱に納めた状態の図で見てみます。
マイクロ製・吸着ターンテーブル
での空気の流れは
吸気の時はターンテーブル→シャフトAssy→バルブAssy→ポンプ→、
排気の時はポンプ→バルブAssy→シャフトAssy〜ターンテーブル→と成ります。
この木製の箱には3ケの貫通した継ぎ手があります。
図のバルブAssyのAからポンプユニットのAへの配管をカタログでは吸・排気の往復が書かれていて、その意味が分かりませんでした。
箱の内部からの吸気と排気の2本を木箱の貫通継ぎ手BとCへ繋ぐと、
貫通継ぎ手の1本Aが余ってしまい、箱の中では何に繋いでいるのかその行き先が見あたらず思案しましたが、このシステムは1気圧の大気中で、吸気時、1気圧の大気圧によってLP盤をターンテーブルに張り付けるのだと云う事を考えたとき答えが見つかりました。
LP盤とターンテーブルの間を吸気し、大気圧がLP盤をターンテーブルに張り付けている、この時、吸気した空気を大気へ排出してやる必要があります。
つまり、Aは大気に繋がっているのだと。
ターンテーブル上で吸気した空気をAで排気している。排気時はその反対。


<切り替えバルブAssy・4方弁>
この一連の修理の間何度か空気のバルブ専門店へ通い何種類かの小さな貫通継ぎ手などを購入しました。
この業界ではマイクロ製切り替えバルブAssyの事を「4方弁」と呼ぶそうです。
働きとしては、B又はCからの空気の流れを選択しSへ導き、その時BとCの選択されなかった方の空気の流れを反転させてAへ導きます。
その動きの様子から4方弁と言います。
継ぎ手以外からの空気の漏れは全くなく精密にして良くつかられています。

参照:「鈴木ブロンズ継手」東京都千代田区岩本町1-3-2 TEL03-3861-8421

<軸受けシャフトAssy>
このシステムの要が軸受けです。
写真の軸受け頂部から3センチ程下、軸受けのターンテーブルとの結合部分に、円周に溝が彫られ、その部分に2ヶの穴が有ります。
写真ではその 空気穴に爪楊枝を差し込んで撮影いたしました。
ターテーブルからの空気はこの穴から軸の中心に入り、それが軸受け下部まで貫通して、其処でまた軸の外へ出て、軸受けシャフトAssy底部の継ぎ手へと流れるのでしょう。
この軸受けは回転精度も大変良く、手で回した感触では全くゴロがあちません。

空気の循環回路では吸気を選択している時は排気で逃がしてやらないと吸気も止まってしまう、この当たり前の事に気付きませんでした。
四方弁・切り替えバルブAssyの継ぎ手Bは排気、継ぎ手Cは吸気、継ぎ手Sは軸受けシャフトAssyへと空気の流れの配管が決まっています。
全体の動きは、大気→ターンテーブル→軸受け切り替えバルブ→ポンプ切り替えバルブ→大気と成ります。
マイクロの吸着ターンテーブル・システム では四方弁・切り替えバルブAssyを中心にポンプへの回路と軸受け→ターンテーブル→大気の2つの回路がちょうどメビウスの輪を一回ひねり を書いた様な空気の流れを作っています。
四方弁・切り替えバルブAssyでは吸気と排気を、バルブの替え選択によって、SとAへ 振り分け、SとAでは反対の空気の流れをしています。
バルブAssyの継ぎ手Sと継ぎ手AではS-Aそれぞれが反対の空気の流れをします。
つまり吸気の時、
大気→ ターンテーブル→軸受けシャフトAssy→切り替えバルブAssy・S〜C→木製・ポンプユニット継ぎ手C→ガラス瓶→ポンプ吸気側〜排気側、が吸気の空気の流れを作っている一つの回路です。
その一方で同時に、ポンプで吸気した空気を大気へ排気しなければなりませんので
ポンプ排気側→ガラス瓶→木製・ポンプユニットB→切り替えバルブAssy・B〜A→大気の回路の二つ流れが同時に存在します。

循環回路としてバルブの継ぎ手A←→木製・ポンプユニットAが大気と繋がっています。
木製・ポンプユニットは継ぎ手Aで大気と繋がっているためポンプが無限大に働いても木製・ポンプユニット内の気圧は大気とほぼ等しく、またターンテーブル側も切り替えバルブAssy・Aを経由して大気と繋がっていますので、無限に働くことが可能です。
今までまで悩ませていた2→3=? の原因は継ぎ手A であり、A=大気ですから、木製・ポンプユニットは継ぎ手A=バルブAssy・Aとなります。
バルブAssy・Aから木製・ポンプユニット・Aへの空気の流れはバルブAssy・Sから軸受けへの空気の流れに対する「逃げ」で反対の動きを示し「アース」と考えれば理解できます。
従って木製ポンプユニット継ぎ手AとバルブAssy・Aはオープンの状態であっても大気(アース)と繋がっています、閉鎖していなければ良いと云う事です、AとAを繋いでもオープンの状態でも同じです。
実際の使用状態ではバルブAssy・Aの口で若干空気の出入りする音がしますので、木製ポンプユニットの継ぎ手Aとパイプで繋いでやるとその音は消えます。

<ターンテーブルの作り>
マイクロの吸着・糸ドライブ・ターンテーブルは素材にステンレス製と砲金製があり、糸掛け部分の直径は310ミリです。
ターンテーブルの円周の糸掛けの上部は12ミリ幅で2ミリ程削られ直径は306ミリと成っています。
私のは砲金製ですが、その工作の精度は高く、ターンテーブル内部では2重構造に成っていて、空気の通り道はスムースに通り、遮断すべき処は完全に遮断され空気の漏れなど一切ありません。
そのターンテーブルに直径300ミリのLP盤を載せます。
ターンテーブル上には直径290ミリと115ミリとの円周上に8ミリ幅のリング状シリコンの弁が壁として組み付けてあります。この壁と壁の間がLPレコード盤の音溝部分で、この部分の空気を吸引して、大気圧で盤をターンテーブルに吸着状態で貼り付けます。


この働きをする為に、直径115ミリの円周の溝に2つの空気穴が有ります。
写真の矢印で示した部分がその穴の一つで軸受けの対角にもう一つ穴が有ります。
この穴は2重ターンテーブル貼り合わせ面に有る空気の通り道を通じ、ターンテーブルを軸受けに組み合わせた時、軸受けシャフトに設けられた空気穴に通じる様に作られています。
軸受けシャフトにも空気の通り道があります。
それらが一本の空気の通り道としてシャフトAssy底面の継ぎ手に繋がっています。

 

2カット上の写真でくすんで見えるのが直径は306ミリの部分です。
この12ミリ幅-2ミリの段差へ 外径360ミリ〜内径306ミリのリングを落とし込んでターンテーブルを拡大するアクセサリがマイクロ精機から出されていたことを偶然知り購入いたしました。
純正品ですからぴったりと羽目合わせ出来ます。そして糸ドライブは従来どうり直径は310ミリ部分へ糸を掛けて使える、よく考えられたアダプターです。
しかしこれを店で販売されている現場に出会っておりません、またカタログにも掲載されていませんでした。


<組み付け>
ポンプ・ユニット・木箱の中へ2本のガラス瓶を配管して収めてスポンジを挟み、その上に重なる様に小さな木製密閉箱ポンプを納め、ガラス瓶からの配管を木箱の貫通継ぎ手BとCへ配管します。
貫通継ぎ手Aは大気ですから、木箱の内側に繋ぐ相手が無くて良いのです。内側はオープン状態とします。
木箱外側の貫通継ぎ手A-B-Cを四方弁の継ぎ手A-B-Cへ繋ぎます。配管は熱帯魚や金魚の空気循環用のシリコン・パイプを使いました。
作動する事を確認します、四方弁を吸気-排気と切り替えますとターンテーブル上ではLP盤を吸着-浮き上がりと動きます。
ところが、木箱の蓋を閉じ内部を圧縮すると、吸気が力強く働いてくれません。
問題は柔らかいシリコン・パイプにあるようです。
排気ではチューブに内圧が掛かっていますので問題なく働いてくれますが、
吸気ではチューブ内の圧力は外気よりも低くなります。折り曲がり部分では低い内圧と高い外気圧によりチューブが押されて、より折れ曲がる方に働きパイプを押し潰し、空気の流れを遮り、結果吸気の働きが弱くなるのでしょう。マイクロ製ポンプ・ユニット内では小さなRで90°と180°の折り曲げが部分あります。スポンジクッションの充填されている箱に押し込める状態で蓋をしますと、これがパイプを押し潰して目詰まりを起こしてしまう原因でしょう。
そこで硬いチューブを探し、ホームセンターのエアー・ポンプ関連コーナーにて内径4ミリの硬質ウレタン・チューブを見つけました。 この吸気系の配管を全てウレタン・チューブに替えて、吸気の動作を確認しました。ちゃんと吸気の働きをします。
そこで箱の内部は排気側も含め全てこのウレタン・チューブにしました。このチューブは肉厚・硬質で深く曲げても凹まず安心して使えます。
私のヴァキュームポンプに関してはこれにて一件落着、元気よく元の働きを示してくれました。
故障の原因は単純なパイプに経年変化による劣化が原因でした。



この修理に思案していた時、MJ 誌編集長がマカラの保守用に確保していたと云う大型のポンプをお譲り頂ました。これを使ってのヴァキュームポンプ制作記はMJ誌「無線と実験」2009年1月号に載せて居ります。このポンプはアルミ・ダイキャスト製で大きさも3倍ほどで、信頼性を伺わせます。
マイクロ・ヴァキューム・ポンプ・ユニットとして工作したそのままの状態にて、ガラス瓶のも付けたままの状態にて、現在は当店入り口右手で金魚用空気ポンプとして作動しております。
写真では分かりづらいですが、吸気側のガラス瓶は50センチ程のパイプで、大気と繋がっていますので雨や湿気を吸気し下に水が貯まっております。

マイクロ製・糸ドライブ・吸着ターンテーブルを使用しポンプ系のトラブルに見舞われた方は今回の私の修理記は参考になると思います。
ポンプ本体が故障の場合は熱帯魚用ポンプを工夫して使うことが出来ます。




<追記・シリコンヴァルブの補修>
30センチターンテーブルの外周部290ミリの円周上とLPレコード・レーベル部分11.5センチの円周上にLPレコードの音溝部分を吸着させる時のシリコン製リングの弁が有ります。ある日当店のスタッフである猫の虎太郎君がパニックに陥り、外周部のシリコン製リングの弁に爪を引っかけてしまい、小さな欠けた部分が生じました。
このままの状態では吸着に際しLP盤を手で押さえて上げなければならず不都合です。
この部分の保守用部品が簡単には入手できませんので修理を考えました。



色々な素材と方法を試した結果、テープにて補修することとしました。
電工用ビニールテープを始め多くの粘着テープは時間経過でノリは柔らかくなりテープは硬化します。布製ガムテープはテープとノリが共に硬化し、しかも相手側にノリが残ります。
素材の感触がシリコンに近い物として、医療用のサージカル・テープを選びました。これを小さく切ってシリコン製リングの裏方に欠けを横断するように貼ります。
写真はテープを張った第一段階で、
シリコンの欠けの部分は表側に欠けと同じ大きさに切ったテープを貼ります。
シリコン・リング幅に併せて余った部分を切り取って完成です。
このテープは1年ほどは安心して使えます。



今週に入ってから当店の愛猫・虎太郎の体調が悪く医者へ行った処、奥歯が抜けかかって居るとの診断。
そして11日(金)に麻酔をして処置をする事になりました。
今日10日夜は明日の病院行きに備えて、私は虎太郎に付き合い店で徹夜する事に、
虎太郎は落ち着かず泣いて訴え、添えた手を離すと5分と寝てくれません。
しかし、おかげでこのページに手直しをしHPへ更新することが出来ました。
11日・夕、虎太郎の処置は歯を8本も抜く大手術でしたが無事終了し、今は麻酔が切れかかりボーとしています。
安全を考えて、一日病院で泊まってもらい、明日元気な虎太郎を引き取りに行きます。

                                            201310.11、

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