埋もれた名盤          
第2回

   
LP復刻された超レアな名盤達
吉田昌弘
マニアの心理とは勝手なもので、自分の持っているモノが幻の名盤などと言われると再発などさせたくないと思いますが、手元に無いとなると八方手をつくしたりして探します。そんなアルバムがオリジナルに忠実に復刻されたりしたときの喜びは新譜のアルバムを手にするのとは違う悦楽があります。今回はそんなアルバムの中から埋もれた名盤を紹介して行きます。
ハワード・ライリー「ディスカッション」
世の中には名だけは聞くがその中身を一度も聞けずに終わるアルバムが有ります。これもその様なアルバムの一枚で、私の処では運良くA面だけはテープで有り「店」の看板として特別なときにだけ掛けてきました。
それがある日のこと、店の常連でジャズ批評・ヨーロッパ特集の全ページを暗記しているT君が駆け込んで来て「ディスカッションが復刻されることに成った」と。
これには耳を疑いました。このようなとても一般受けしそうもないアルバム、早速調べて見るとあの「澤野商会」からで、450枚プレスし400枚を日本で発売すると言う。早速常連のみんなに買わせたのは言うまでもない事です。
内容は60年代イギリスジャズの頂点を記録したピアノトリオでジャズを哲学にまで昇華したと言っても良いプレイです。「ナルディス」などは日本人の「銀パリセッション」と似た表現で、このあたりはユーラシアの東西の端っこに位置する島国の共通点でしょうか。
アルバート・アイラー「ファースト・レコーディング」

このアルバムが復刻された時は廃盤コレクターの偏見に満ちた欺瞞を感じました。
62年ストックフォルムで記録されたアイラー初めてのアルバムであり、Vol-1 はソネットからファースト・レコーディングとして再発されたものでSJゴールド・ディスクにも成り広く知られていますが、最初はBird Notesより全く異なるジャケット・デザインで出され、そのVol-2は極めてプレス枚数が少なく、ほとんど流通しなかったということを噂で聞いていました。
Vol-1が市場に出た時は、スゥエーデンへのカップルでの往復切符以上の金額になり、1,2セットでの本邦初お目見えなどは「車」が買える金額がつきました。
そのBird NotesがDIWよりオリジナルに忠実に復刻され、とりわけVol-2は世界で初めての本プレスとも言えます。私の処に偶然オリジナルのジャケットが有りますがDIWは全く見分けの付かない最上の仕上がりです。またこの日のアイラーはもう1枚分の演奏を残しているらしく、これなどは是非ともVol-3としてLPで発売して戴きたいのです。
しかしオリジナルを買いそびれたと言って悔しがっていた人が、DIWの再発盤を買いません、これでジャズを愛しているのか少々疑問です。
ダスコ・ゴイコビッチ「SNAP SHOT」

数ある冬季オリンピックの中でサラエボ以上に美しい式典は無いでしょう、宗教民族を越え妖精達が織りなす様は永遠の平和すら感じさせてくれました。
そのオリンピックを記念してD,ゴイコビッチ A,クイーンを中心にユーゴスラビアのメンバーが参加して「サラエボ・セッション」2枚のアルバムを作りました。その直後のサラエボは戦火に包まれ原盤の有無どころではありません。
最近COSMIC SOUNDSよりLPで復刻されましたので聞くことが出来ます。
このアルバムは録音も良くビックバンドジャズの楽しさを教えてくれます。日本のジャズファンは概してコンボを好みビックバンドを敬遠しますが、スピーカーのセッティングを調整するなどしてオーディオ装置の手入れをすると音に広がりが出てビックバンドも楽しいものです。

フランコ・トナニ「NIGHT IN FONORAMA」

JUKE BOX 原盤のこのアルバムがLP再発され切れの良いドラムの音が気に入り私はオーディオ・チェックに使っています。発売されたLPはB面の終わり部分にプレスミスが有りSTの針が飛びます、しかしMONOの針を何度か通しその後STに切り替えると何とか成る事を発見しました、つまりLPとしては不完全な出来なのです。
最近は「サラエボ・セッション」と同じCOSMIC SOUNDSよりLPで復刻されておりますのでそれを買われると良いでしょう。
しかし私は不完全であっても私の世界で補う事が出来ますので、当初再発された盤を選びます、それはジャケットにコーティングが有り、レーベルもJUKE BOXだからで、この様なこだわりは不合理なだけで一種の病気であると自覚はしております。
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