第9回

安田倫子
埋葬
 
 

埋もれていく
ゆっくりと しずかに
気づいた時にはもう
遅いのでしょうね
そう、気づきながら
また埋もれていく

いっそ
気づかぬまま
誰かが埋めてくれたらいいのに
それがどんな物語だとしても
物語が終わりへ差し掛かると
きまっていつも眠くなってしま
こわい、からではなく
まぶしい、わけでもなく

日向の匂いがする洗濯物といっしょに
涙のわけまでたたもうとする
クレープみたいにうすいのが
幾層にも重なっていて
すぐにやぶけてしまう

やぶけた今日をなぞりながら
明日に埋もれていこうとする
身体すっぽり
かくれてしまったら
それはきっと
包まれていると
錯覚されてしまうのでしょうね

この物語が誰のものなのか
背景と登場人物が
常に反転しつづけている
 


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